『 失敗の科学 』

 マシュー・サイド(著)、有枝 春(翻訳)の『 失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織 』を読んだ。

 上司に薦められ、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス、社内における個々のプロジェクトマネジメントの支援を横断的に行う部門)での業務を意識して読んだが、他にも学びとなるとこがあったので、それをまとめる。以下3点。



 1点目は、組織として失敗を活かすマネジメント。失敗を吸い上げ活かすための仕組みとマインドセットが必要である。

 現代の飛行機事故率の低さは、事故をその後に活かすシステムが導入され、飛行機事故の原因追求と改善が全世界的に行われたおかげである。

 ただ、システムだけではスタッフからの情報提供を得ることはできない。失敗を報告することによって非難されることや自分の評価を下げることを恐れるというマインドセットを変える必要がある。



 2点目は個人として失敗を成長につなげること。何事も事後的に得られるという「成長型マインドセット」の下、大きなゴールを小さく分解し、失敗と改善を積み重ねていくことが必要である。

 練習の「量」か「質」かの議論に関しては、以下の事例が興味深い。

 『アーティストのためのハンドブック―制作につきまとう不安との付き合い方』の著者デイヴィッド・ベイルズとテッド・オーランドは、同書でこんな実験を紹介している。ある陶芸クラスの初日、生徒が2組に分けられ、一方は作品を「量」で評価し、もう一方は「質」で評価すると告げられた。量のグループは最終日に全作品を提出し、各自、総重量が50ポンド(約23キロ)なら「A」、40ポンド(約18キロ)なら「B」と評価される。質のグループは質のみによる評価なので、自分で最高だと思う作品をひとつ提出すればいい。
 結果、面白い事実が明らかになった。全作品中最も「質」の高い作品を出したのは、「量」を求めたグループだったのだ。ベイルズとオーランドはこう指摘する。
 量のグループは、実際に作品を次から次へと作って試行錯誤を重ね、粘土の扱いもうまくなっていった。しかし質のグループは、最初から完璧な作品を作ろうとするあまり頭で考えることに時間をかけすぎてしまった。結局あとに残ったのは、壮大な理論と粘土の塊だった。

 

 

 3点目は、現代社会においても思考停止が起きているということ。人類の歴史において長い間、通説を覆すことが喜ばれない時代が続いた。地動説を唱えたガリレオは、異端審問にかけられ有罪さえ言い渡された。フランシス・ベーコン以降、自然科学においてはそれまでの通説を覆すことが認められてきたが、社会科学においては現代でも、検証不能なまま正しいとされている通説が多々ある(就職活動や昨今のスキャンダルでも思い当たる節は無限にある)。



 失敗ありきの考え方として「事前検死」という考え方は非常に面白いと思った。失敗する前に検死を行うかのように、プロジェクトの失敗を想定してなぜ失敗したのかを事前に検証し対策を練るという、究極のフェイルファストの手法である。様々なことに活かせそうだと思う。

Nakashima Shogo's Ownd

国立大学進学⇒一年間交換留学⇒大学院進学⇒中退⇒ベトナムでインターン の大学生のブログ

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